
Site
計画地は神奈川県の西部に位置する自然豊かな秦野市。眼前に「大山」を望む工業専用地域内にあり、県道に面する自社ビルの一室である。
二階建ての建物は、一階が金属の溶接や曲げ加工の工場となっており、会議室は二階の執務スペースの一画にある。

Request
既存の会議室を視覚的に明るく変える、新規の取引先の記憶に残るような応接スペース、
社内の打ち合わせでは積極的な意見交換が生まれる雰囲気。という要望をいただいた。
壁に飾られたアートや途中まで進められていたDIY塗装の跡は、雰囲気づくりに対する積極的な試行錯誤を物語っている。


Proposal – 1
会議室ならではの大きなテーブルに空間が分断されるような形式を見直し、取引先とのフラットな関係性をうむ「床」を提案した。
大きな天板を透過する素材とすることで対面する人の体をより近く感じることができ、ビジネスシーンの曖昧な距離感に変化をもたらす。
入口側から900mm程度の床仕上げを切り替えることで3.5m×3.5mの象徴的なプロポーションを獲得し
「茶室のようなもてなし」の領域性を来客の記憶の中に残すことを考えた。

様式的な空間の緊張感を緩和させるためマテリアルは素朴な風合いのものを中心に選定した。
床材の目地方向を貼りわけ、30mm幅の見切り材を用いることで畳敷きに見立てた。
オフィス空間でありながらも郊外の風景に調和する「和室のようなくつろぎ」を両立させた。
Proposal – 2
実際の執務状況や予算配分を再検討し、各部詳細な調整を行なった。
天井は既存利用とし、床のレベル差をフラットとするなど工事項目を厳選した。

Process
クライアントが掲げる共創の理念を踏襲し、金属材料の手配や加工はクライアント側で行うこととした。
一階で製造し、大型エレベーターを用いて二階へ搬入可能であるため運搬費用や品質確保の面からも合理的である。
Completed photo
随所に施主支給品の金属素材を散りばめることで自社の技術力を活用しながら「茶室・和室らしさ」との対比で先進的な印象を表現した。
ステンレスは周囲の色味を拾うことで空間の中に溶け込み、工業製品がもつ硬く冷たいイメージを柔らかく転換させている。



















2020年のパンデミックを契機として、オンラインによる会議を取り入れた企業も多い。
収束後もリモート業務が定着し、出社せずに働くという選択肢も広く一般化してきている。
その反面、現代のオフィスには社内・社外を問わず「交流の場」としての機能が求められている。
ビジネスにおける「体温を伝える大切さ」にあらためて立ち返ると、
画面の共有ではなく床面の共有によって築かれる実空間でのコミュニケーションは今後も不可欠である。

合理的な情報共有に終始した業務の進め方は、トラブル対応の際にワンチームとして機能しづらく時として争いの元となる。
対面会議の価値に回帰した今回のプロジェクトは、会議室リノベーションにおけるこれからの主流となるのではないだろうか。
このプロジェクトを通じて、クライアントへの共感が広まり、あらたな出会いが生まれていく「これから」に期待している。