中目黒 焼鳥店

Site

高級焼鳥店が軒を連ねる中目黒駅から歩いて5分ほど。駅前から続く大通りから一本入ったところにお店はある。

Request

シンプルな内装、抑え目の照明、店内BGMはかけない静かな空間。という要望をいただいた。

そこで焼鳥ならではの食の体験を素直に伝える場として「手元」にフォーカスされる建築を考えた。

なぜなら鶏肉を束ねる「串」が焼き師にとっては調理器具、お客さんにとっては食器となることから、
つくることと食べることが一連の流れの中にあり、焼き師の手からお客さんの手へと渡される瞬間に、特有の価値を見出したからである。

Proposal

I型のカウンターが平面を二分する明快な構成を提案した。ゆとりある席の間隔を確保しつつ、
個人経営店のオペレーション負担を軽減できるような計画とした。

カウンターの仕上げは「左官」である。 目の前にいる焼き師の手捌きと呼応するような、職人の塗り技術と左官の手触りを感じられる素材として選定した。
硬質でひんやりとした天板は、焼きたての鶏肉とお互いを引き立て合うために存在している。

高さを低めに抑えた吊戸棚照明とカウンターによって厨房の風景を切り取った。着座した際に、意識の重心が下がり自然と手元に向かっていく。

外観は、街並みの雑多さとのコントラストが顔になるように、目立つ看板は避け、
長いドアハンドルに提灯をかけることだけでこのお店に向かって来た人に「焼鳥」が見える見立てのサイン計画を提案した。

Completed photo

間口が狭く奥行きの深いテナントスペースの中に細長いオブジェクト(カウンター・吊戸棚)を挿入することで 天井と床の付近に陰影のふところをつくり、
切り取られた厨房の風景が印象的な空間とした。 食と向き合い、記憶に残るワンシーンとなるように、映画に用いられる横長のアスペクト比から着想を得て計画している。

テナントの立地条件と確保したい天井高さから検討したところ、排気ダクトが広範囲に露出してしまうことが明らかであった。
シンプルなオブジェクトで空間を貫く操作は、静かな空間のノイズとなりうる設備機器を隠す意匠としても寄与している。

席についたお客さんは無意識のうちにカウンターの質感を指でなぞる。
意識は自然と指先へと移行し、これから提供される焼鳥への期待感が生まれる。

施工:丸新株式会社

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